男性更年期障害によるイライラや気分の落ち込みは、日常生活の質を大きく低下させる可能性があります。これらの症状を改善するためには、専門医による適切な治療を受けることが重要です。治療法は、症状の程度や原因、患者さんの希望などに応じて選択されますが、代表的なものにホルモン補充療法があります。男性更年期障害の治療の基本は、不足している男性ホルモンであるテストステロンを補充する治療(テストステロン補充療法:TRT)です。テストステロン補充療法には、主に注射剤と塗り薬(クリーム剤やジェル剤)があります。注射剤は、2~4週間に1回程度、医療機関で筋肉注射を行います。効果が比較的早く現れやすいとされていますが、定期的な通院が必要です。塗り薬は、毎日皮膚に塗布することで、テストステロンを補充します。自宅で手軽に行えるのがメリットですが、効果の現れ方には個人差があり、皮膚のかぶれなどの副作用に注意が必要です。テストステロン補充療法を行うことで、テストステロン値が正常範囲に戻ると、イライラや気分の落ち込み、意欲低下といった精神症状の改善が期待できます。また、疲労感や筋力低下、性機能障害といった身体症状の改善も見られることがあります。ただし、テストステロン補充療法には、いくつかの注意点や副作用のリスク(多血症、睡眠時無呼吸症候群の悪化、前立腺への影響など)もあるため、治療開始前には必ず医師による詳細な検査と説明を受け、定期的なモニタリングを行いながら慎重に進める必要があります。前立腺がんの既往がある方や、重度の前立腺肥大症の方は、原則としてテストステロン補充療法の対象とはなりません。ホルモン補充療法以外にも、症状に応じて漢方薬や抗不安薬、抗うつ薬などが処方されることもあります。また、カウンセリングや生活習慣の改善指導も、治療の重要な柱となります。医師とよく相談し、自分に合った治療法を見つけていくことが大切です。