痛風の原因となる高尿酸血症は、生活習慣や遺伝的要因だけでなく、特定の薬剤の副作用として引き起こされることもあります。これを「薬剤性高尿酸血症」または「薬剤誘発性痛風」と呼びます。普段から何らかの薬を服用している方は、その薬が尿酸値に影響を与える可能性がないか、知っておくことが大切です。尿酸値を上昇させる可能性のある代表的な薬剤としては、まず利尿薬が挙げられます。特に、サイアザイド系利尿薬やループ利尿薬は、高血圧や心不全、むくみなどの治療に広く用いられていますが、腎臓での尿酸の再吸収を促進し、尿中への排泄を抑制することで、血中尿酸値を上昇させることがあります。次に、**アスピリン(低用量)**も注意が必要です。アスピリンは、血液をサラサラにする効果があるため、心筋梗塞や脳梗塞の予防などに用いられますが、低用量(1日100mg程度)の服用でも、腎臓からの尿酸排泄を抑制し、尿酸値を上げる可能性があります。また、免疫抑制剤の一部(シクロスポリンやタクロリムスなど)も、腎機能に影響を与え、尿酸値を上昇させることが知られています。臓器移植後や自己免疫疾患の治療などで使用される薬剤です。さらに、結核治療薬の一部(ピラジナミドやエタンブトールなど)も、尿酸値を上げる副作用が報告されています。その他、一部の抗がん剤や、ニコチン酸製剤(脂質異常症の治療薬)なども、尿酸値に影響を与える可能性があります。これらの薬剤を服用している方が、必ずしも高尿酸血症や痛風を発症するわけではありません。しかし、元々尿酸値が高めの方や、痛風の既往がある方は、これらの薬剤を使用する際に特に注意が必要です。もし、何らかの薬を服用し始めてから尿酸値が上昇したり、痛風発作が起きたりした場合は、自己判断で薬を中止せず、必ず処方した医師に相談してください。医師は、薬剤の必要性や代替薬の有無などを考慮し、適切な対応を指示してくれます。