糖尿病境界型と診断された場合、治療の基本は食事療法と運動療法ですが、これらの生活習慣の改善だけでは十分に血糖コントロールができない場合や、合併症のリスクが高いと判断された場合には、薬物療法が検討されることもあります。「治る」という目標、つまり血糖値を正常範囲に戻し、糖尿病への進行を阻止するために、薬物療法はどのような役割を果たすのでしょうか。まず理解しておくべきなのは、糖尿病境界型の段階での薬物療法は、必ずしも全ての人に必要となるわけではないということです。多くの場合、まずは食事療法と運動療法を数ヶ月間試み、その効果を見極めます。生活習慣の改善だけで血糖値が十分に下がり、安定すれば、薬物療法は必要ありません。しかし、以下のような場合には、薬物療法が考慮されることがあります。* 食事療法・運動療法を十分に行っても、血糖値が目標値まで下がらない場合 * HbA1cの値が比較的高く、糖尿病への移行リスクが高いと判断される場合 * 肥満度が高い、あるいはメタボリックシンドロームを合併している場合 * 心血管疾患のリスクが高い場合 * その他、医師が薬物療法の必要性を認めた場合 糖尿病境界型で使用される可能性のある薬剤としては、インスリン抵抗性を改善する薬(ビグアナイド薬、チアゾリジン薬など)や、食後の血糖値上昇を緩やかにする薬(α-グルコシダーゼ阻害薬など)、あるいはインスリン分泌を緩やかに促す薬(DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬など)が挙げられます。これらの薬剤は、医師が患者さんの状態や他の疾患の有無、副作用のリスクなどを総合的に判断して選択します。薬物療法を開始した場合でも、食事療法と運動療法は継続して行うことが基本です。薬はあくまで治療の補助であり、生活習慣の改善が最も重要であることに変わりはありません。薬物療法によって血糖値が安定し、生活習慣も改善されれば、将来的には薬を減らしたり、中止したりできる可能性もあります。医師とよく相談し、自分に合った治療法を選択していくことが大切です。