痛風の発症には、食生活や生活習慣といった環境要因だけでなく、遺伝的な要因も関わっていることが知られています。つまり、痛風になりやすい「体質」というものが存在するのです。家族に痛風の人がいる場合、自分も痛風になるリスクが比較的高くなる傾向があります。では、具体的にどのような遺伝的要因が痛風の発症に関与しているのでしょうか。まず、尿酸の産生に関わる遺伝子です。体内でプリン体が分解されて尿酸が作られる過程には、様々な酵素が関わっています。これらの酵素の働きが遺伝的に強い、あるいは特定の酵素が欠損しているといった場合、尿酸が過剰に産生されやすくなり、高尿酸血症、そして痛風のリスクが高まります。例えば、HPRT(ヒポキサンチン・グアニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ)という酵素の部分的欠損は、若年性の痛風の原因となることがあります。次に、尿酸の排泄に関わる遺伝子です。腎臓は、血液中から尿酸をろ過し、尿として体外へ排出する重要な役割を担っています。この尿酸の排泄プロセスには、尿酸トランスポーターと呼ばれるタンパク質が関与しています。これらのトランスポーターの遺伝子に特定の変異があると、尿酸の排泄能力が低下し、血液中に尿酸が溜まりやすくなります。日本人には、この尿酸排泄低下型の高尿酸血症が多いと言われています。URAT1やABCG2といった遺伝子の多型(個人差)が、尿酸値や痛風発症リスクと関連していることが報告されています。ただし、遺伝的な要因を持っていたとしても、必ずしも痛風を発症するわけではありません。遺伝的素因に加えて、食生活や生活習慣といった環境要因が複合的に絡み合うことで、痛風は発症すると考えられています。遺伝的にリスクが高いと自覚している方は、より一層、食生活の管理や適度な運動、アルコールの制限といった生活習慣の改善に努めることが、痛風の発症予防には重要となります。