患者さんにとっても、働く側にとっても、多くのメリットを持つケアミックス病院ですが、その一方で、その多機能性ゆえに抱える、特有の課題やデメリットも存在します。その光と影の両面を理解することは、日本の医療の現状と未来を考える上で、非常に重要です。まず、多くのケアミックス病院が直面する課題として、「専門性の追求の難しさ」が挙げられます。急性期から慢性期まで、幅広い領域をカバーするため、どうしても「広く浅く」という形になりがちです。そのため、最先端の高度急性期医療や、特定の疾患に対する、非常に専門性の高い治療を追求したいと考える、意欲的な医師や看護師にとっては、少し物足りなさを感じてしまう場面があるかもしれません。大学病院のような、アカデミックな研究活動や、最新の治療法の開発といった点では、どうしても専門病院に一歩譲る形となります。また、「経営の複雑さ」も、運営側の大きな課題です。急性期、回復期、療養といった、それぞれの病棟では、国が定める診療報酬の体系が全く異なります。これらの異なるルールを、一つの病院の中で並行して、かつ効率的に運営していくためには、非常に高度な経営管理能力が求められます。この複雑さが、時に、柔軟な病院運営の足かせとなってしまうこともあるのです。さらに、利用者側の視点からは、「何が得意な病院なのかが分かりにくい」というデメリットも考えられます。様々な機能を持つがゆえに、「何でも屋」というイメージを持たれ、その病院が持つ、本当の強みや専門性が、地域の住民や、他の医療機関に伝わりにくい、というジレンマを抱えています。そして、これらの課題の根底にあるのが、「人材の確保と育成の難しさ」です。急性期から慢性期まで、多様な病状の患者に対応できる、幅広い知識とスキルを持った、質の高いスタッフを、安定して確保し、育成し続けることは、多くのケアミックス病院にとって、永遠の課題と言えるでしょう。これらの課題を乗り越え、いかにして自院の特色を出し、地域社会に貢献していくか。その模索が、今、全国のケアミックス病院で行われています。
ケアミックス病院が抱える課題と現実