日本の社会が、世界でも類を見ないスピードで、超高齢化、そして多死社会へと突き進む中、これからの医療と介護は、どのような姿を目指していくべきなのでしょうか。その一つの、そして極めて有力な答えを、実は「ケアミックス病院」という存在が、すでに示してくれているのかもしれません。彼らが実践している医療の形は、まさに、これからの日本が目指すべき、未来の医療の縮図とも言えるのです。未来のケアミックス病院は、もはや単に「病気を治す場所」ではなく、「地域住民の、生から死までの、あらゆる健康課題を支える、コミュニティの中核拠点」へと、その役割を大きく進化させていくでしょう。まず、医療と介護の垣根は、さらに低く、そして曖昧になっていきます。病院という一つの建物の中に、高度な医療を提供する病棟から、リハビリ施設、長期療養のフロア、そして介護が必要な高齢者のための住まい(介護医療院やサービス付き高齢者向け住宅など)までが、一体的に整備され、人々は、その時々の健康状態に応じて、その複合体の中を、シームレスに行き来することになります。そこでは、治療だけでなく、「予防」や「健康増進」も、病院の重要な役割となります。地域の住民が、気軽に健康相談に訪れたり、介護予防のための体操教室に参加したりと、病院が、地域コミュニティの交流の場としての機能も、担うようになるでしょう。そして、その活動は、病院の壁を越え、地域全体へと広がっていきます。ICT(情報通信技術)を活用して、院内の多職種チームが、地域のクリニックの医師や、訪問看護師、ケアマネジャー、ヘルパーと、常に患者さんの情報をリアルタイムで共有し、まるで一つの大きなチームのように、在宅での療養生活を、遠隔から、しかし密にサポートします。そして、人生の最期を迎える時が来たならば、住み慣れた自宅か、あるいは、顔なじみのスタッフがいる、病院の中の穏やかな療養フロアか、本人が望む場所で、尊厳ある最期を迎えられるように、地域全体で支えていく。病気だけを診るのではなく、その人の暮らしと、人生そのものを診る。ケアミックス病院が描く未来とは、そんな、温かく、そしてしなやかな、新しい医療の姿なのです。