睡眠時無呼吸症候群の厄介な点の一つは、最も重要な症状が、自分自身が眠っている、つまり無意識の時間帯に起こるため、自覚するのが非常に難しいという点にあります。多くの場合、家族やベッドパートナーからの指摘によって、初めて自分の身に起きている異変を知ることになります。ここでは、睡眠中に現れる、自分では気づきにくい無呼吸症候群の危険なサインについて解説します。最も直接的で、そして最も危険なサインが、睡眠中の「呼吸の停止」です。ベッドパートナーが気づく典型的なパターンは、毎晩のようにかいていた、けたたましいほどの大きないびきが、突然、不気味なほどに静かになる瞬間です。まるでスイッチが切れたかのように、呼吸音が完全に消え、胸や腹の動きも止まってしまいます。その時間は十秒以上、時には一分近くに及ぶこともあり、見ている側は「このまま死んでしまうのではないか」という、強烈な恐怖に襲われます。そして、息苦しさの限界に達した体が、必死に呼吸を再開しようとして、「ガガッ!」という、あえぐような、しゃくりあげるような音と共に、再び大きないびきをかき始めるのです。この一連の流れが、一晩に何度も繰り返されます。また、本人が夜中に何度も「息苦しさで目が覚める」という経験をしている場合も、無呼吸症候群を強く疑うべきサインです。無呼吸によって体内の酸素濃度が低下し、脳が生命の危険を察知して、強制的に体を覚醒させるために起こる現象です。本人は、ただ寝苦しいだけ、あるいは悪夢を見たと勘違いしていることも少なくありません。さらに、「夜間頻尿」も、見過ごされがちな重要な症状の一つです。無呼吸状態になると、胸腔内の圧力が変化し、心臓に負担がかかります。すると、心臓は体内の水分量を減らして負担を軽減しようと、尿を多く作るように促すホルモンを分泌します。これにより、夜中に何度もトイレに起きてしまうのです。年齢のせいだと片付けてしまいがちですが、実は夜間の低酸素状態が原因である可能性も十分に考えられます。その他にも、異常なほどの寝汗をかく、寝相が非常に悪く、朝起きるとベッドがぐちゃぐちゃになっている、といった症状も、夜間に体がもがき苦しんでいることの現れかもしれません。これらのサインは、あなたの知らない夜の世界で、あなたの体が発している、静かな、しかし切実なSOSなのです。
睡眠中に起こる無呼吸症候群のサイン