舌が痛い、あるいは表面に白い膜のようなものが付着しているという症状がある場合、口腔カンジダ症という感染症が原因である可能性が考えられます。これは、誰の口の中にも存在している常在菌であるカンジダというカビ(真菌)が、何らかの理由で異常に増殖することで発症する病気です。健康な状態であれば唾液の自浄作用や免疫力によって増殖が抑えられていますが、高齢による体力低下、糖尿病などの全身疾患、あるいはステロイド薬や抗生物質の長期服用によって口内の細菌バランスが崩れると、カンジダ菌が優位になり炎症を引き起こします。口腔カンジダ症にはいくつかのタイプがあり、偽膜性カンジダ症では舌や頬の粘膜に白い苔のようなものが付着し、これを拭い取ると赤く腫れて痛みや出血を伴うのが特徴です。一方、紅斑性カンジダ症では白い膜は見られず、舌が全体的に赤くなり、焼けるようなヒリヒリとした痛みが強く出ます。これは特に義歯を使用している方や、唾液の分泌が少ないドライマウスの方に多く見られます。また、舌の中央部がひし形に赤く盛り上がる正中菱形舌炎も、カンジダ菌の関与が指摘されています。舌が痛い原因がカンジダ症である場合、市販の口内炎薬(ステロイド剤)を使用すると、かえって菌を増殖させてしまい症状が悪化することがあるため、正確な診断が非常に重要です。歯科や口腔外科では、粘膜を軽くこすって顕微鏡で菌を確認することで容易に診断がつきます。治療には抗真菌薬のうがい液や塗り薬が用いられ、通常は1週間から2週間程度で劇的に改善します。予防のためには、口腔内を清潔に保つことが基本です。毎日のブラッシングはもちろんのこと、義歯を使用している場合は義歯洗浄剤を使って除菌し、清潔な状態で装着するようにしましょう。また、唾液には菌の増殖を抑える成分が含まれているため、よく噛んで食事をし、マッサージなどで唾液の分泌を促すことも有効です。さらに、ヘルペスウイルスによる感染も舌に激しい痛みをもたらすことがあります。この場合は小さな水ぶくれが多数でき、発熱を伴うこともあります。舌が痛いという症状の裏には、こうした目に見えない微生物の活動が隠れていることがあるため、症状が長引く際や痛みが強いときは、自己判断で薬を使わず、専門医の指導を受けることが早期治癒への近道となります。