ある45歳の事務職の女性、Aさんの事例を紹介します。Aさんは半年前から下を向くと首が痛いという症状を抱えて来院されました。主な症状は、書類に目を通す際や料理で手元を見る際に首の後ろ側に鈍い痛みが生じ、夕方になると頭痛を伴うというものでした。初診時の検査では、首の可動域が著しく制限されており、特に前屈動作において正常な範囲の半分程度しか動かせない状態でした。画像診断の結果、特定の疾患は見つかりませんでしたが、頸椎の配列が乱れ、周囲の筋肉がカチカチに硬くなっていることが確認されました。治療方針として、まずは理学療法士による徒手療法で筋肉の緊張を取り除くとともに、Aさんの生活習慣を詳細にヒアリングしました。その結果、Aさんは趣味の刺繍に没頭するあまり、1日3時間以上も深い前傾姿勢を続けていたことが判明しました。私たちはAさんに対し、刺繍を行う際は30分ごとにタイマーをかけ、必ず1分間の休憩を挟むように指導しました。休憩中には椅子に深く腰掛け、両手を頭の後ろで組んでゆっくりと上を向く胸椎伸展運動を行うようアドバイスしました。加えて、自宅でのセルフケアとして、就寝前に首から肩にかけてホットパックで15分間温める温熱療法を導入しました。治療開始から1ヶ月後、Aさんは下を向くと首が痛いという感覚が以前の3割程度まで減少したと報告してくれました。3ヶ月が経過する頃には、長時間の作業後でも強い痛みを感じることはなくなり、悩まされていた頭痛も完全に消失しました。この事例から学べるのは、下を向くと首が痛いという症状の解決には、専門的な治療と並行して「痛みの原因となっている活動」を見つけ出し、そのやり方を修正することが不可欠であるという点です。Aさんのように趣味や仕事で下を向く時間が長い方は、その動作を完全にやめることは難しくても、休憩の取り方や姿勢の補正を行うことで、痛みとうまく付き合いながら快方へ向かうことができます。首の痛みは適切なアプローチによって必ず改善の道が開けます。
下を向く動作で首が痛む患者の改善事例