睡眠時無呼吸症候群は、眠っている間に呼吸が何度も止まったり、浅くなったりすることを繰り返す病気です。この病気が引き起こす症状は多岐にわたりますが、その中でも最も代表的で、多くの人が最初に気づくきっかけとなるのが、「いびき」と「日中の強い眠気」という二つのサインです。まず、いびきは単なる騒音ではなく、気道が狭くなっていることを示す危険なアラームです。睡眠中は全身の筋肉が緩みますが、無呼吸症候群の患者さんの場合、特に喉の周りの筋肉が過度に緩み、舌の付け根(舌根)や軟口蓋が喉の奥に落ち込んで、空気の通り道である上気道を狭めてしまいます。この狭くなった気道を空気が無理やり通る時に、周囲の粘膜が振動して発生するのがいびきです。そして、この狭窄がさらに進み、気道が完全に塞がれてしまうと、呼吸が完全に停止する「無呼吸」の状態に陥ります。この時、大きないびきが突然、不気味なほど静かになり、しばらくすると、体が酸欠状態に苦しんで、あえぐような、しゃくりあげるような激しい呼吸と共に、再び大きないびきをかき始める、というのが典型的なパターンです。次に、日中の耐え難い眠気は、夜間の深刻な睡眠不足の現れです。呼吸が止まるたびに、体は酸素不足という生命の危機に陥ります。脳は、この危険を察知して、体を覚醒させて呼吸を再開させようとします。この「窒息からの覚醒」が、一晩に何十回、重症の場合は何百回と繰り返されるため、本人はぐっすり眠っているつもりでも、脳も体も全く休息できていないのです。その結果、日中に強烈な眠気や倦怠感、集中力の低下といった症状が現れます。会議中に居眠りをしてしまったり、仕事で単純なミスを繰り返したり、そして何よりも危険なのが、運転中に意識が遠のく「居眠り運転」です。これらの症状は、決して本人の気合が足りないとか、怠けているからというわけではありません。それは、夜ごと繰り返される窒息との戦いによって、心身が限界に達していることを示す、体からの悲痛なSOSなのです。
無呼吸症候群の基本的な症状とは