ある保育園に通う3歳の男児、健太くんの事例を紹介します。健太くんはそれまで大きな病気をすることなく育ってきましたが、3歳の誕生日を過ぎた頃、突然の40度の熱に見舞われました。母親は当初、インフルエンザを疑い受診しましたが、検査結果は陰性。解熱剤を服用しながら様子を見ていたところ、4日目に熱が下がり、体中に赤い発疹が現れました。医師の診断は突発性発疹でした。ここからが健太くんと家族にとっての試練の始まりでした。熱が下がり、体力的には回復しているはずの健太くんでしたが、凄まじい不機嫌さに襲われたのです。普段は聞き分けが良く、一人遊びもできる性格でしたが、この時期は母親が1メートルでも離れるとパニックになったように泣き叫びました。食事も気に入ったものしか口にせず、お気に入りのテレビ番組を見せても「見たくない」と怒りながらリモコンを投げつける始末。3歳児という、体格も声も大きくなった状態での不機嫌病は、家族の負担を倍増させました。母親は仕事の調整を余儀なくされ、自宅で看病を続けましたが、24時間続く密着と泣き声に、次第に追い詰められていきました。この事例での解決の糸口となったのは、父親によるサポートと環境の変化でした。父親は仕事から帰ると、母親を別室で1時間休ませ、その間、健太くんのわがままを全て受け入れる覚悟で寄り添いました。また、外の空気を吸わせるためにベビーカーに乗せて近所を散歩させたところ、健太くんの気持ちが少し落ち着く場面もありました。突発性発疹の発疹期の不機嫌は、脳のわずかな炎症や体内のバランスの変化が原因といわれていますが、子供自身も自分の感情を制御できずに苦しんでいます。健太くんの場合、不機嫌さは発疹が消えかかる6日目あたりから急に収まり、翌日には嘘のように元の穏やかな姿に戻りました。この事例から学べるのは、3歳の不機嫌病は親のしつけや育て方の問題ではなく、あくまで病気の一症状であると割り切る心の持ちようが重要だということです。一時的にルールを緩め、子供が安心できるまでとことん付き合うことが、結果として家族全員のストレスを最小限に抑えることに繋がります。