すっきりと目覚めるはずの朝、目が覚めた瞬間から、頭全体が重く、ズキズキとした鈍い痛みに襲われる。十分な時間、眠ったはずなのに、全く疲れが取れていない。そんな、原因不明の「起床時の頭痛」に、慢性的に悩まされているとしたら、それは単なる寝不足や肩こりのせいではなく、「睡眠時無呼吸症候群」が引き起こしている、危険なサインかもしれません。なぜ、眠っている間に呼吸が止まることが、朝の頭痛に繋がるのでしょうか。そのメカニズムは、夜間に繰り返される「低酸素状態」と深く関係しています。睡眠中に無呼吸や低呼吸の状態に陥ると、体内に取り込まれる酸素の量が著しく減少し、血液中の酸素濃度が低下します。すると、脳は、この酸素不足という危機的状況を打開するために、少しでも多くの血液(酸素)を脳へと送り込もうとして、脳の血管を強制的に拡張させます。この、拡張した血管が、周囲の神経を圧迫したり、刺激したりすることで、頭痛が引き起こされると考えられているのです。この起床時の頭痛には、いくつかの特徴があります。まず、痛みは後頭部や頭全体に感じられる、重く鈍い痛み(鈍痛)であることが多いです。そして、その痛みは、起床後、しばらくして体が活動を始め、正常な呼吸によって血液中の酸素濃度が回復してくると、数時間のうちに自然と消えていくのが一般的です。そのため、多くの人は、「起きた時だけだから」「少し我慢すれば治る」と、つい軽視してしまいがちです。しかし、この頭痛は、あなたの脳が、毎晩のように酸欠の危機に瀕していることを示す、極めて重要な警告です。この状態を放置することは、脳の血管に常に負担をかけ続けることを意味し、将来的には脳卒中などの、より深刻な病気のリスクを高めることにも繋がりかねません。起床時の頭痛と並行して、「喉の渇き」や「口の中のネバつき」を感じることも、無呼吸症候群の重要なサインです。これは、夜間に鼻呼吸ができず、口を開けて呼吸(口呼吸)をしているために、口腔内が乾燥してしまうために起こります。慢性的な起床時の頭痛と、日中の強い眠気。この二つの症状が揃っている場合は、無呼吸症候群の可能性が非常に高いと考え、一度、専門医に相談することを強くお勧めします。