1日に10回以上トイレに行く、急に強い尿意を感じて我慢できない(尿意切迫感)、トイレに間に合わずに漏らしてしまうことがある(切迫性尿失禁)…。これらの症状に悩まされている場合、「過活動膀胱(OAB:OverActive Bladder)」の可能性があります。過活動膀胱は、膀胱に尿が十分に溜まっていないにもかかわらず、膀胱が勝手に収縮しようとしてしまうために、頻尿や尿意切迫感といった症状が現れる病気です。日本では、40歳以上の男女の約8人に1人が過活動膀胱の症状を抱えていると言われており、決して珍しい病気ではありません。過活動膀胱の原因は、まだ完全には解明されていませんが、いくつかの要因が関与していると考えられています。加齢に伴う膀胱機能の変化や、脳血管障害(脳卒中など)やパーキンソン病といった神経系の病気が原因で、膀胱のコントロールがうまくいかなくなることがあります。また、男性の場合は前立腺肥大症、女性の場合は骨盤底筋のゆるみなども、間接的に過活動膀胱の症状を引き起こす要因となることがあります。しかし、多くの場合、特定の病気が原因ではなく、膀胱の神経が過敏になっているなど、原因がはっきりしない「特発性過活動膀胱」です。過活動膀胱の診断は、問診(症状の詳しい聞き取り)や排尿日誌(排尿の回数や量、尿意の強さなどを記録するもの)、尿検査、超音波検査などによって行われます。治療法としては、まず行動療法(膀胱訓練、骨盤底筋体操など)や生活習慣の改善(水分摂取の調整、カフェインやアルコールの制限など)が行われます。これらの保存的治療で効果が不十分な場合には、薬物療法(抗コリン薬やβ3作動薬といった、膀胱の過敏な収縮を抑える薬)が用いられます。過活動膀胱は、適切な治療を受けることで症状をコントロールし、生活の質を改善することができる病気です。思い当たる症状があれば、泌尿器科を受診して相談してみましょう。