「地域包括ケアシステム」という言葉を、あなたはご存知でしょうか。これは、団塊の世代が七十五歳以上となる二千二十五年を目途に、国が進めている、これからの日本の医療・介護のあり方を示す、非常に重要なキーワードです。そして、このシステムの成功の鍵を握る、中核的な存在として、今、「ケアミックス病院」に、大きな期待が寄せられています。地域包括ケアシステムとは、簡単に言えば、重度の要介護状態となっても、高齢者が、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを、人生の最後まで続けることができるようにするための仕組みです。そのために、「医療」「介護」「介護予防」「生活支援」「住まい」という五つのサービスが、地域の中で、切れ目なく、一体的に提供される体制を目指しています。この複雑なパズルを組み合わせ、機能させる上で、ケアミックス病院が果たす役割は、計り知れません。なぜなら、ケアミックス病院は、その一つの建物の中に、このシステムの多くの要素を、すでに内包しているからです。例えば、ある高齢者が、自宅で転倒して骨折したとします。まず、ケアミックス病院の「急性期病棟」で手術を受け、命の危機を脱します。次に、院内の「回復期リハビリテーション病棟」に移り、集中的なリハビリで、再び歩けるように支援を受けます。そして、退院が近づくと、院内の医療ソーシャルワーカーが、地域のケアマネジャーや、訪問看護ステーション、介護施設と連携し、その人が自宅に帰った後も、安心して生活を続けられるように、介護サービスの調整を行います。もし、自宅での生活が困難になった場合は、院内にある「療養病棟」や「介護医療院」で、長期的な療養を続けることも可能です。このように、ケアミックス病院は、病気の発症から、治療、リハビリ、在宅復帰、そして時には看取りまでを、地域の中で、シームレスに繋ぐことができる、まさに「地域包括ケアシステムの縮図」とも言える存在なのです。地域のクリニックや介護施設と連携する「ハブ機能」として、これからの高齢化社会を支える、不可欠なインフラとなるでしょう。